「脱炭素って何から始めればいいの?」「うちの会社には関係ある?」
——そんな声をもとに、現場担当者がよく口にする疑問に答えます。
※ 本FAQは、建設GX分野の専門家の監修のもと作成しています。
「脱炭素」とは、CO2(二酸化炭素)などの温室効果ガスの排出量をゼロに近づけることです。
地球温暖化の主な原因は、石油・石炭・ガスを燃やしたときに出るCO2。これを減らしていこう、というのが世界共通の取り組みです。
日本は2050年までに「カーボンニュートラル(排出量と吸収量を均衡させ実質ゼロにすること)」を達成する目標を掲げており、2030年度には2013年度比で46%以上削減することを目指しています。
厳密には違いますが、日常的にはほぼ同じ意味で使われています。
脱炭素はCO2排出量をゼロにすること、カーボンニュートラルは排出量と植林などによる吸収量をバランスさせて「実質ゼロ」にすることです。明確な定義が定まっていないため、会話の中では同義語として使われることが多いです。
日本全体のCO2排出量のうち、建物・インフラからの排出が約3分の1を占めています。資材の製造・輸送まで含めると約半分にのぼります。
また、建物や道路・橋梁などのインフラは一度整備されると数十年にわたって使われるため、排出効率の低い構造物が造られると、そのCO2排出量が長期間固定されてしまいます。
建設業は単なる「土木・建築構造物をつくる仕事」ではなく、社会全体のCO2排出量を左右する大きな役割を持っています。
CO2排出量が「どこから排出されたのか?」を示す分類です。
スコープ1(直接排出):自社の重機・車両・ボイラーなどが燃料を燃やして直接出すCO2。
スコープ2(エネルギー間接):自社が使う電気・熱の発電・供給段階で出るCO2。
スコープ3(その他間接):資材の製造・輸送、外注先の施工、構造物の使用・廃棄など。スコープ3は15カテゴリに細分されており、建設業では総排出量の大半を占めます。
「普通のCO2計算」は、工事現場での直接排出だけを数えることが多いです。
ライフサイクルCO2(LC CO2)は、原材料の採掘から構造物の解体・廃棄まで、全段階で排出されるCO2の合計です。工事現場での排出はLC CO2全体のほんの一部。資材製造段階や構造物の使用・維持管理段階のCO2がはるかに大きいため、そこまで含めて削減を考えることが重要です。
ライフサイクルCO2を段階別に呼び分けた言葉です。
アップフロントカーボン:
資材製造〜施工完了までに排出されるCO2。
構造物完成前に「先払い」「確定」される排出量で、ライフサイクルCO2算定のベースとなります。
オペレーショナルカーボン:
構造物の使用・維持管理中に排出されるCO2。
冷暖房・照明・給湯・トンネル換気・ポンプ設備など日常的な設備運転による電力・ガス・水の消費のほか、
外壁塗装・屋根防水・舗装打ち替え・橋梁塗装といった維持管理工事における建設機械・工事車両の稼働もここに含まれます。
エンボディドカーボン:
構造物をつくり、維持し、解体・廃棄するまでの全工程で、資材や施工に由来して排出されるCO2の総量。
アップフロントを含む広い概念として使われることもあり、一度排出されると後から取り消せない排出量です。
※オペレーショナルカーボン(運用時のエネルギー消費)は含みません。
基本の式は「活動量 × 排出原単位 = CO2排出量」です。コンクリート1トンを使ったとき、1トンあたりのCO2排出量(排出原単位)を掛け算するだけです。
①工事・構造物の情報整理(用途・規模・耐用年数など)→②資材・燃料の使用量を集計→③原単位データを選ぶ→④掛け算して合計、という流れです。土木は工事数量ベースの原単位、建築は床面積あたりの概算原単位から始めるのが現実的です。専用ツール(楽らくCO2算定・J-CATなど)を使えば初めての方でも算定できます。
土木・インフラ工事の場合:国土交通省の「インフラ分野GHG排出量算定マニュアル案」が基本。建設物価調査会の「楽らくCO2算定」は国土技術政策総合研究所が定める算定マニュアルを参考に、自動算定できるツールです。
建築物の場合:(一財)住宅・建築SDGs推進センター(IBECs)等が提供する「建築物ホールライフカーボン算定ツール(J-CAT)」が広く使われています。簡易・標準・詳細の3段階があり、設計初期から竣工まで対応できます。
セメントの一部を高炉スラグやフライアッシュなどに置き換えることでCO2排出量を削減した製品です。
コストは国土交通省の調査(直轄土木工事)で「従来品と同価格以下」が約43%、「多少の追加コスト」が57%という結果が出ています。普及とともに価格差は縮小しています。建物・土木構造物のCO2排出のうち、コンクリートと鋼材が大きな割合を占めるため、まずここを切り替えることが最も効果的です。
建物やインフラのCO2排出のうち、コンクリートと並んで鋼材が大きな割合を占めています。その鋼材を低炭素化した製品が「グリーン鋼材」です。
大きく2種類あります。電炉材は、鉄スクラップを電気炉で溶かして再利用する製法で、高炉材と比べてCO2排出量を大幅に削減できます。マスバランス方式のグリーン鋼材は、製鉄工場全体で削減したCO2量を特定の鋼材に割り当てる手法です。
コストは電炉材が通常品より5〜20%程度、マスバランス方式のグリーン鋼材は3〜4割程度高い傾向にあります。ただし低炭素コンクリートと同様、普及が進むにつれて価格差は縮小していくと見られています。
どちらも効果があると認められています。
木造建築:木は成長過程でCO2を吸収・蓄積し、建材になった後もそれを閉じ込め続けます。RC造と比較してライフサイクルCO2を38〜76%削減できるとされています(文科省・農水省資料)。
リノベーション:構造体を残して内装・設備を刷新するため、新築に比べ建材投入量が大幅に少なくなります。同規模新築比でCO2排出量最大76%削減という事例もあります。
ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)は建物の運用時CO2を実質ゼロにする取り組みです。建物ライフサイクル全体のうち使用段階が約6〜7割を占めるため、ZEBの普及は脱炭素化に直結します。
なお、ZEBは「使う段階」だけのカバーであり、建築物向けの概念です。土木・インフラ分野では、低炭素工法の採用・省エネ型維持管理・長寿命化による更新頻度の低減が同様の位置づけとして注目されており、建材製造・施工段階を含めたライフサイクル全体での削減が、土木・建築ともに共通の課題です。▷ シビグリのコラムで詳しく解説しています
有利になることがあります。
入札面:公共工事の総合評価落札方式で、電動建機の使用・省エネ実績・ライフサイクルCO2の算定が加点対象となる方向で検討が進められています(国土交通省 脱炭素アクションプラン、2025年4月)。
融資面:「サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)」では目標達成に応じて金利が優遇されます。「グリーンローン」では長期・好条件での資金調達が可能です。自治体の利子補給制度も全国で拡充されています。
むしろ、中小こそ早めに動くことで優位に立てます。
①公共入札で有利になる場合があります:総合評価での加点により、受注確率の向上が期待できます。
②元請・大手から選ばれやすくなる:大手はサプライチェーン全体のCO2削減を求められており、対応できる協力会社への優先発注が今後強まる可能性があります。
③融資面の優遇:地銀や信金の「サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)」で金利が引き下げられる商品が広く普及しています。経産省・環境省等でも利子補給制度、低利融資の制度があります。
Step 1 自社排出(スコープ1・2)の算定
重機の燃料・オフィスの電気代からCO2量を算出。まず数字を把握することが大切です。
Step 2 サプライチェーン(スコープ3)の算定
資材調達・外注・廃棄・構造物の使用・維持管理など間接排出量を算出します。
Step 3 過去3年分の実績整理と目標策定
Step 4 ライフサイクルCO2の試行算定
実際の工事を1〜3件試験的に計算して感覚をつかみます。
Step 5〜6 算定拡大と削減策の実行
低炭素コンクリート・電動建機・ZEB化などに着手します。
一定規模以上の建築物を対象に、ライフサイクルCO2の算定・報告を義務化する制度が2028年度頃から始まる予定です。
現在はその準備段階として、建築物LCA実施制度の詳細検討・公共建築物でのLCA先行実施・支援補助制度の整備が進められています。土木・インフラ分野でも国土交通省の直轄工事を中心にGHG排出量の算定・開示が拡大しており、今後は民間発注でも要求が広がる見込みです。
義務化の対象外であっても、今から算定に慣れておくことが競合との差につながります。
令和8年度時点で活用できる主な補助金を3つ紹介します。
①建築GX・DX推進事業(LCA実施型):LCAを実施した場合、最大650万円/件の補助金が支給されます。算定に必要なCO2原単位を新たに策定する場合は、1原単位につき400万円が加算されます。
②サステナブル建築物等先導事業(LC CO2評価先導型):省CO2に係る先導的な技術の普及に寄与する住宅・建築物が対象で、国が対象費用の1/2を補助します。延べ面積2,000㎡以上の場合はLC CO2の算定が必須となっています。
③ZEH補助金(新築ZEH-M):ZEHに対する補助金ですが、LC CO2算定を行った場合はZEHへの補助額に10万円/戸が上乗せされます。
補助制度は毎年内容が変わるため、最新情報はシビグリのコラムでも随時お伝えします。
「脱炭素」とは、CO2(二酸化炭素)などの温室効果ガスの排出量をゼロに近づけることです。
地球温暖化の主な原因は、石油・石炭・ガスを燃やしたときに出るCO2。これを減らしていこう、というのが世界共通の取り組みです。
日本は2050年までに「カーボンニュートラル」を達成する目標を掲げており、2030年度には2013年度比で46%以上削減することを義務づけています。
厳密には違いますが、日常的にはほぼ同じ意味で使われています。
脱炭素はCO2排出量をゼロにすること、カーボンニュートラルは排出量と植林などによる吸収量をバランスさせて「実質ゼロ」にすることです。明確な定義が定まっていないため、会話の中では同義語として使われることがほとんどです。
日本全体のCO2排出量のうち、建物・インフラからの排出が約3分の1を占めています。資材の製造・輸送まで含めると約半分にのぼります。
また、建物や道路・橋梁などのインフラは一度整備されると数十年にわたって使われるため、排出効率の低い構造物が造られると、そのCO2排出量が長期間固定されてしまいます。
CO2排出量を「どの範囲まで計算するか」を示す分類です。
スコープ1(直接排出):自社の重機・車両・ボイラーなどが燃料を燃やして直接出すCO2。
スコープ2(エネルギー間接):自社が使う電気・熱の発電・供給段階で出るCO2。
スコープ3(その他間接):資材の製造・輸送、外注先の施工、構造物の使用・廃棄など。建設業では総排出量の大半を占めます。
「普通のCO2計算」は工事現場での直接排出だけを数えることが多いです。
ライフサイクルCO2(LC CO2)は、原材料の採掘から構造物の解体・廃棄まで全段階で排出されるCO2の合計。工事現場での排出はLC CO2全体のほんの一部です。
ライフサイクルCO2を段階別に呼び分けた言葉です。
アップフロントカーボン:資材製造〜施工完了まで。建物・土木共通の概念です。
オペレーショナルカーボン:構造物の使用・維持管理中のCO2。建物では省エネ・ZEB、インフラでは維持管理効率化が効くのはここです。
エンボディドカーボン:資材そのものに「埋め込まれた」CO2。
基本の式は「活動量 × 排出原単位 = CO2排出量」です。①工事・構造物の情報整理(用途・規模・耐用年数など)→②使用量の集計→③原単位の選定→④掛け算して合計、という流れです。土木は工事数量ベース、建築は床面積ベースの原単位から始めるのが現実的です。
土木・インフラ:国土交通省の「インフラ分野GHG排出量算定マニュアル案」が基本。建設物価調査会の「楽らくCO2算定」は国土技術政策総合研究所が定める算定マニュアルを参考に、自動算定できるツールです。
建築物:IBECs等の「建築物ホールライフカーボン算定ツール(J-CAT)」が標準的です。
セメントの一部を高炉スラグやフライアッシュなどに置き換えてCO2排出量を削減した製品です。コストは「従来品と同価格以下」が約43%、「多少の追加コスト」が57%(国土交通省調査)。普及とともに価格差は縮小しています。建物・土木構造物のCO2排出のうち、コンクリートと鋼材が大きな割合を占めるため、まずここを切り替えることが最も効果的です。
建物やインフラのCO2排出のうち、コンクリートと並んで鋼材が大きな割合を占めています。その鋼材を低炭素化した製品が「グリーン鋼材」です。
大きく2種類あります。電炉材は、鉄スクラップを電気炉で溶かして再利用する製法で、高炉材と比べてCO2排出量を大幅に削減できます。マスバランス方式のグリーン鋼材は、製鉄工場全体で削減したCO2量を特定の鋼材に割り当てる手法です。
コストは電炉材が通常品より5〜20%程度、マスバランス方式のグリーン鋼材は3〜4割程度高い傾向にあります。ただし低炭素コンクリートと同様、普及が進むにつれて価格差は縮小していくと見られています。
どちらも効果があると認められています。
木造建築:RC造と比較してライフサイクルCO2を38〜76%削減できるとされています。
リノベーション:構造体を残すため新築比で建材投入量が大幅に少なく、CO2排出量を最大76%削減した事例もあります。
ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)は建物の運用時CO2を実質ゼロにする取り組みで、脱炭素化に直結します。なお、ZEBは「使う段階」だけのカバーであり、建築物向けの概念です。土木・インフラ分野では、低炭素工法の採用・省エネ型維持管理・長寿命化による更新頻度の低減が同様の位置づけとして注目されており、建材製造・施工段階を含めたライフサイクル全体での削減が、土木・建築ともに共通の課題です。▷ シビグリのコラムで詳しく解説しています
本当です。
入札面:公共工事の総合評価落札方式で、電動建機の使用・省エネ実績・ライフサイクルCO2の算定が加点対象となる方向で検討が進められています(国土交通省 脱炭素アクションプラン、2025年4月)。
融資面:「サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)」では目標達成に応じて金利が優遇。「グリーンローン」では長期・好条件での資金調達が可能です。
むしろ、中小こそ早めに動くことで優位に立てます。
①公共入札で有利になる場合があります:総合評価での加点により、受注確率の向上が期待できます。
②元請・大手から選ばれやすくなる:脱炭素に対応できる協力会社への優先発注が今後強まる可能性があります。
③融資面の優遇:地銀や信金の「サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)」で金利が引き下げられる商品が広く普及しています。経産省・環境省等でも利子補給制度、低利融資の制度があります。
Step 1 自社排出(スコープ1・2)の算定
重機の燃料・オフィスの電気代からCO2量を算出します。
Step 2 サプライチェーン(スコープ3)の算定
Step 3 過去3年分の実績整理と目標策定
Step 4 ライフサイクルCO2の試行算定
実際の工事を1〜3件試験的に計算します。
Step 5〜6 算定拡大と削減策の実行
低炭素コンクリート・電動建機・ZEB化などに着手します。
一定規模以上の建築物を対象に、ライフサイクルCO2の算定・報告を義務化する制度が2028年度頃から始まる予定です。
現在はその準備段階として、建築物LCA実施制度の詳細検討・公共建築物でのLCA先行実施・支援補助制度の整備が進められています。土木・インフラ分野でも国土交通省の直轄工事を中心にGHG排出量の算定・開示が拡大しており、今後は民間発注でも要求が広がる見込みです。
義務化の対象外であっても、今から算定に慣れておくことが競合との差につながります。
令和8年度時点で活用できる主な補助金を3つ紹介します。
①建築GX・DX推進事業(LCA実施型):LCAを実施した場合、最大650万円/件の補助金が支給されます。算定に必要なCO2原単位を新たに策定する場合は、1原単位につき400万円が加算されます。
②サステナブル建築物等先導事業(LC CO2評価先導型):省CO2に係る先導的な技術の普及に寄与する住宅・建築物が対象で、国が対象費用の1/2を補助します。延べ面積2,000㎡以上の場合はLC CO2の算定が必須となっています。
③ZEH補助金(新築ZEH-M):ZEHに対する補助金ですが、LC CO2算定を行った場合はZEHへの補助額に10万円/戸が上乗せされます。
補助制度は毎年内容が変わるため、最新情報はシビグリのコラムでも随時お伝えします。
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