2026.06.01

2050年カーボンニュートラルの実現に向け、建設分野でも脱炭素化への対応が進んでいる。
中でも、公共工事で使用されるコンクリート製品については、国土交通省が低炭素型コンクリートの活用を段階的に進める方針を示しており、
プレキャストコンクリート業界でも対応が本格化しつつある。
こうした中、一般社団法人 道路プレキャストコンクリート業協会(RPCA)は、2025年9月から「低炭素型RPCA工場認証審査」を開始した。
制度創設の背景や業界の現状、今後の展望について、RPCA技術委員長の松下氏に話を伺った。
一般社団法人 道路プレキャストコンクリート業協会
(丸栄コンクリート工業株式会社)
松下 敏郎氏
国の脱炭素施策とプレキャスト業界:2027年度から原則使用化へ
「低炭素型RPCA工場認証審査」とは:第三者認証による品質・製造体制の確認
RPCAは、道路用プレキャストコンクリート製品(道路PCa製品)の技術基盤確立を目的として活動する業界団体だ。
2026年4月時点で、正会員110社、賛助会員26社の計136社と幅広い企業が加盟している。
2025年6月には、今後の協会活動の拡張を見据えて協会名称を「道路プレキャストコンクリート製品技術協会」から「道路プレキャストコンクリート業協会(RPCA)」へ変更した。
背景について松下氏は、「設計・製造・施工・維持修繕まで一貫して担う会員企業が増えてきたこと」を挙げる。
工場で製造したPCa製品を現場へ搬入し、施工まで一貫して行う企業が増えてきました。
そうした施工実態を踏まえ、建設業団体としての活動も必要になってきたと考えています。
現在の建設業法には「プレキャストコンクリート工事業」という専門工事業種はなく、既存区分の中で整理されている。
松下氏は、「プレキャスト化の進展に伴い、今後は施工実態と制度区分との整理が必要になる場面も増えてくるのではないか」とみている。
またRPCAでは、施工要領や歩掛なども含め、プレキャスト工法に関する技術体系整備にも取り組んでいく考えだ。
道路PCa製品は、主に公共工事のうち道路事業で使用される。
出典:協会提供アンケート結果1
RPCAが実施したアンケートでも、多くの会員企業が、国の脱炭素政策に対応していく必要性を認識していることが確認されたという。
国土交通省は2025年6月、カーボンニュートラルに向けたリーディング施策の一つとして、低炭素型コンクリートの活用方針を公表した。
これを受け、2025年7月には「低炭素型コンクリート試行工事」が開始されている。
試行工事では、低炭素型コンクリートの活用を推進する方針が示されており、プレキャストコンクリートを使用する工事も対象とされている。
さらに2027年度から「用途等を指定して使用を原則化し、順次対象を拡大」、2030年度以降「削減割合を順次引き上げ」と発表している。
松下氏は、「既に実績のある低炭素化技術も多く、プレキャスト業界としても対応可能な範囲から取り組みが進みつつある」と説明する。
一方で、低炭素型製品への切り替えには多額の設備投資も必要となる。
既に切り替えを進めている企業もありますが、多くの企業は、発注者や市場動向を見ながら対応を進めている状況です。
出典:協会提供アンケート結果 2
RPCAでは2019年度から、「RPCA審査制度」を運用している。
これは、道路PCa製品や製造工場について、道路管理者が求める品質・性能を満たしているかを第三者委員会が審査し、適合証明書を交付する制度だ。
背景には、道路PCa製品の多くがJIS製品ではなく、既存のJIS認証制度だけでは、道路管理者が必要とする品質確認を十分にカバーしきれないという事情がある。
こうした従来制度に加え、2025年度から新たに「低炭素型RPCA工場認証審査」と「低炭素型RPCA製品審査基準適合証明書交付審査」が開始された。
工場認証では、低炭素型製品を安定的に製造できる体制を確認し、製品審査では、RPCAが定める審査基準に基づき、品質や製造条件などを確認する。
2026年4月時点では、約130製品が低炭素型認証を取得しているという。
工場認証が前提となるため、製品審査は実質的に2026年3月から本格的に始まりました。
限られた期間の中でも、一定数の申請が進んでいます。
また、国土交通省の低炭素型コンクリート試行工事に対応する第三者認証制度の一つとして、活用が進むことも期待されている。

RPCA審査制度は、設計業務や工事発注時に、発注者やゼネコン、コンサルタントが活用することを想定して設計されている。
そのため今後は、制度の認知拡大や活用方法の整理が課題となる。
特記仕様書への記載など、発注段階での活用が進むことが重要だと考えています。
国土交通省に対しては、制度説明や証明書見本の提示など意見交換も行っているという。
また、低炭素型コンクリート試行工事については、各地方整備局でも具体的な検討が進み始めている。
今年に入ってから、整備局レベルで具体的な動きが出てきている印象があります。
一方で、試行工事はまだ始まったばかりであり、今後の運用状況を見ながら課題が整理されていく段階にある。
現在、低炭素型RPCA審査制度では、国の脱炭素の流れや低炭素型コンクリート施策を踏まえた運用が進められている。
今後は、低炭素型鉄筋やCO2吸着型骨材など、新たな技術への対応も想定される。
国土交通省の施策や定義変更に合わせて、審査基準も見直していくことになると思います。
また、コンクリートのCO2を吸着・固定する能力に関する研究も進められている。
将来的には、製品製造時のCO2排出量だけでなく、供用期間中のCO2固定量まで含めた評価も行われる可能性があります。
プレキャスト工法については、工場製造による品質管理のしやすさなどから、低炭素化への対応も進めやすい面があるという。
道路インフラ分野における低炭素化における道路用プレキャストコンクリート製品の貢献度は、今後さらに広がっていきそうだ。
国の脱炭素施策が具体化する中、道路で使われる製品のかなりの割合を占める道路プレキャストコンクリート業界でも、品質確保と低炭素化を両立する取り組みが進み始めている。
RPCAが進める低炭素型認証制度は、環境性能だけでなく、道路PCa製品の品質や製造体制を第三者認証として確認する仕組みでもある。
2027年度から予定される低炭素型コンクリートの原則使用化を前に、今後の制度活用や普及動向が注目される。
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